動物園・水族館 対象:飼育管理・施設運営

動物園・水族館の水運営——生き物を育てる水のコストと安定性

動物の飼育水・展示水槽の維持には大量の水が必要です。水道代が運営費を圧迫する動物園・水族館が、井戸水活用によってコスト削減と安定供給を実現する方法を解説します。

水族館の大型水槽に水を張るとき、展示用の淡水域を新しく整備するとき——施設担当者はその水量を計算しながら、内心どこかで「これを維持するのにいくらかかるのか」を考えています。

動物園・水族館の運営において、水は「使いたいだけ使える」ものではありません。予算との兼ね合いで、展示規模や水換えの頻度が制約を受ける場面は実際にあります。

この業界が抱える「水」の問題

動物園・水族館の水使用は、施設の規模と展示内容によって大きく異なりますが、共通して抱える課題があります。

飼育プールの維持 ペンギン・アザラシ・ラッコ・イルカなどを飼育する施設では、大型の飼育プールを清潔に保つための頻繁な換水が必要です。水槽の水量が数十〜数百トン規模になる大型展示では、換水1回あたりのコストが数万円に達することがあります。

淡水魚・汽水域の展示水槽 淡水魚・両生類・爬虫類の展示では、水質管理が生死に直結します。塩素に敏感な種もおり、塩素中和処理が常に必要です。換水のたびに脱塩素処理が必要な上水道は、手間とコストの両方がかかります。

公園・庭園の池・水景施設 動物園の園内に設けられた池・噴水・流水路は、景観と動物の生態展示を兼ねています。これらの維持水量も積み重なると相当な量になります。

月の水道代が100〜300万円以上に達する大型施設では、水道費が入場料収入に対して無視できない比率を占め、「水の使い方」を経営課題として捉えざるを得ない状況があります。

課題解決のために検討される選択肢

① 循環ろ過システムの高度化 既存の水循環・ろ過設備を更新し、換水頻度を減らしながら水質を維持する方法です。飼育技術の進歩とともに、このアプローチが主流になっています。ただし、設備投資が必要です。

② 雨水・河川水の活用 敷地内に貯水池を作り、雨水を利用する方法です。降水量に依存するため安定性に欠けます。

③ 節水型ノズル・弁の更新 配管系統のロスを減らす地道な改善です。効果は限定的ですが、コストは低いです。

④ 自家井戸の掘削 地下水を飼育水・補給水として活用する方法です。

井戸掘削を選んだ場合のメリット

動物園・水族館に井戸を導入する意義は、「大量使用する水のコストを下げながら、水質を安定させる」ことにあります。

コスト削減 プール補給・清掃・景観用水など「飲料水品質が不要な用途」に井戸水を振り向けることで、上水道使用量を大幅に削減できます。年間数百万円〜数千万円の削減が見込める大型施設もあります。

水質面での相性 地下水は塩素を含まないため、脱塩素処理が不要です。淡水魚・両生類など塩素に敏感な生き物の飼育水として直接使いやすく、水質管理の手間が減ります。ミネラルバランスも安定しており、水質変動が少ないため、生き物にとっても安定した環境を作りやすいです。

展示の多様化 「地下○メートルから湧き出る天然地下水」を展示の一要素として活用する施設もあります。水の来歴を来訪者に伝えることは、施設の環境への取り組みを示すコミュニケーションにもなります。

知っておくべきデメリットと、その向き合い方

海水魚には塩分調整が必要 海水魚の展示には塩分を含む海水が必要です。地下水は淡水であるため、海水展示には別途の塩分調整が必要です。

対策: 海水魚の展示槽には引き続き上水道+海水の素を使い、淡水魚・プール・景観用途に井戸水を使い分ける形で導入します。

特定の生き物には水質適合性の確認が必要 イモリ・サンショウウオなど繊細な両生類では、地下水の微量成分が影響を与えることがあります。

対策: 新規導入前に少量の試用期間を設け、生体への影響がないことを確認します。水質分析データを飼育員と共有し、安全性を確認した上で本格稼働します。

季節によって水量が変動する場合がある 地下水の水位・水量は季節や降水量によって変動することがあります。

対策: 上水道との二系統を維持し、渇水期や水量不足時には上水道に切り替えられる構成にします。


動物や水生生物を大切に飼育することと、持続可能な施設運営は矛盾しません。水コストの削減と水質安定の両方に貢献できる井戸の活用可能性を、まずは現地調査で確認してみてください。

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